マーケティング

アパレルのプロが教えるマーケティング講座|其の2|STP+4P分析『市場細分化』とは?

OEMやコンサルタントとしていろんな企業様や個人様とお仕事をしてきたなかで、ブランドの雰囲気やアイテムのイメージがまとまっていなかったり、徐々にずれて行ってしまう様な事がよく起こっています。お話を聞いてみると大体はSTP+4P分析の認識が甘かったり、明瞭化出来ていない事が多々あります。ここではその中のSの部分『市場細分化』を解説して行きます。

目次

市場細分化(セグメンテーション)とは?

市場を、類似したニーズ・特性・行動パターンを持つ消費者グループに分割してグループ分けを行う事を市場細分化と言います。

市場細分化を行う目的は、消費者を区分すると、狙うべき市場がハッキリするところにあります。消費者のニーズによってマーケティング戦略を変えることで、ターゲットに対して最も効果的なアプローチを考えやすくなります。

また、区分ごとに自社の競合となる会社が分かるので、自社と他社の違い(強みや弱み)を明らかにでき、他社との差別化を図るのに役立つでしょう。新製品を開発するか否かの判断基準にもなります。

セグメンテーション

 

市場細分化のメリット・デメリット

メリット


.顧客の相違が認識できるので、企業の製品やサービスと顧客ニーズとのマッチングが図れる。

.ニッチマーケティングが可能になる。

.競争優位が大きくて収益性が高い市場への資源の集中ができる。

.競争者とは異なったやり方で市場を考察することができるので競争優位が得られる。

 このように市場細分化を行う事により競争優位性を得る可能性の高い市場に絞って初期費用を抑えてビジネスを行う事ができます。市場細分化がうまくできていない場合は、どんなに良い商品でも消費者になかなか受け入れてもらえなかったり、競合企業が強すぎて無駄にコストをかけなければいけなくなったりとダメージが大きいです。

デメリット


セグメンテーションを行うと、セグメントごとにアプローチの方法を変えなければいけません。
複数の施策を同時に行うことで、かえって非効率なマーケティングになってしまう可能性もあるでしょう。

低価格化など、多くのユーザーに共通する価値観からアプローチを行うのであれば、マスアプローチを選択したほうが効率的というケースもあるので注意が必要です。

市場細分化するための変数

 市場細分化を行う際、さまざまな切り口で分けていく必要があります。

その切り口を変数と言い、【消費財市場】と【生産財市場】では必要とされる変数にも違いがあります

消費財市場


消費財市場の場合、顧客の対象が個人消費者となるため、個人をそれぞれの属性に分けるための変数を用います。

Ⅰ.地理的基準

 国、地域、都市規模などによる分類で、気候、経済発展度、文化・宗教、政策などによる消費者の行動の違いを明確にします。国内市場を例に取ると、家電、衣類、食品などが地域性の影響を受けやすい商品の代表です。また、特定地域に的を絞ると、工場の建設や販売網の整備を新たに必要とすることもあり、地理的変数は経営全般に影響を与える可能性を含んでいるといえます。

Ⅱ.デモグラフィック変数

 性別、年齢、職業、所得、学歴などの個人のプロフィールを示す変数で、多くの消費財がこれによりターゲットの規定を行っています。情報の収集が容易なため、利用頻度が高い変数ですが、人々の価値観の多様化により、同じセグメントに分類されても実際の消費行動はまるで異なることもあるので注意が必要です。

Ⅲ.心理的変数

 人は生まれ育った環境やその後の生活体験、また準拠集団などによって異なった価値観を持っており、それが消費行動にさまざまな影響を与えます。雑誌、ファッションなど感性的な消費が中心となる分野では、この心理的変数による細分化が特に重要となります。

Ⅳ.行動変数

 製品に対する知識、態度、使用状況などの行動変数により市場を細分化することもあります。例えばビール市場では、愛飲家をヘビー、ミドル、ライトといった飲用量で分類することで、きめ細かなマーケティング展開を可能としています。

生産財市場


生産財市場の場合、顧客対象が法人や公官庁などの団体となるため、消費財市場の変数に加えてさらに複数の変数で緻密に分けていくことが重要です。

Ⅰ.オペレーティング変数

使用頻度、利用状況など。

Ⅱ.購買方法

購買方針、購買基準など。

Ⅲ.購買に絡む状況要因

緊急性など。

Ⅳ.購買者の特性

決済権の有無など。

消費財市場と同じように人口動態変数を用いますが、このとき生産財市場においては企業規模や業種などで分けていきます。

 

 

セグメンテーションをする際に重要な「4R」とは?

ここまでは、セグメンテーション変数の種類について説明しました。セグメンテーションによって立案するマーケティング手法は企業によって異なるため、設定するターゲットが適切かどうかを判断することが大切です。セグメンテーションをもとにマーケティング戦略を立案する際は、次の4つの「R」を意識しましょう。

Rank(優先順位)

Rank」では、「自社の強みを活かせられるか」「競合と比較して不利な状況になっていないか」のように、優先順位を考えながらセグメンテーションできているかをチェックします。

たとえば、「イタリアでの修行の成果を活かして、高級感のあるイタリアンレストランを開きたい」と考えているにも関わらず、メインターゲットを「10代のカップル」に設定すると、誤ったマーケティング戦略の立案につながりかねません。

もちろん10代のカップルを顧客から除外するわけではありませんが、高級感のあるレストランであれば、ある程度の収入がある層をメインのターゲットにしたほうが成功しやすいと考えられます。「仕事帰りに外食をして帰るオフィス勤務の20~30代女性」「雰囲気良く食事を楽しみたい30~40代の夫婦」などに設定すると、より一貫性のあるマーケティング戦略を考案しやすくなります。

Realistic(規模の有効性)

「Realistic」では、ターゲットに設定したセグメントに十分な市場規模があるかを判断します。

たとえば、住宅街にパスタ屋を展開している企業が「仕事帰りにパスタを食べたい」というニーズを発見できても、その人数が少なければ売上は伸ばしにくくなります。ターゲットを「休日に外食するファミリー層」のように、より多くの消費者を獲得できる市場にターゲットを変更すれば、売上を伸ばしやすくなるでしょう。

Reach(到達可能性)

「Reach」では、ターゲット層に商品やサービスを届けられるか、SNSや広告宣伝などで企業の情報を伝えられるかをチェックします。

「多くの消費者に喜んでもらえるケーキを提供できる」という強みを持った店舗でも、アクセスしにくいエリアに住む消費者を獲得するのは困難な事です。「〇〇駅から徒歩〇分以内に住む人」のように適切なエリアを選べば、マーケティングにかかるコストを抑えつつ効率的に売上を伸ばせるようになります。

Response (測定可能性)

「Response」では、設定したターゲットに対してマーケティングをした場合、その結果を測定できるかを考えます。

「近隣住民にチラシを配布する」というマーケティング手法を考えても、店舗に足を運んだ顧客がチラシを見て来店したのか、インターネットで店舗を知って来店したのか区別できなければ、チラシ配布に力を入れるべきかどうかを判断できなくなります。

「チラシを持参した方にドリンク一杯プレゼント」のように、チラシに特典を設ければ、チラシの効果を測定しやすくなります。また、SNS限定で配布するデジタルクーポンを活用すれば、マーケティング効果を手軽に集計・分析することが可能です。

まとめ

 商品は常に奇抜さや最先端なものじゃなければ売れないと思っていませんか?

あなたの製品は、ある消費者にとっては「ちょうどいい」、「お手ごろ感」と思われているのかもしれません。

今の市場では競争力が無いと思われている製品・サービスも市場を変えればそれが長所と思われることもあり得ます。

どの市場に製品・サービスを投入してアピールするか、市場細分化をしてよく考えてみましょう。

製品は最先端じゃなくても必要としている層は必ずあるのです。

そのユーザー層を発見することが、商品開発では重要なのです。

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